スタジオジブリ最新作映画『君たちはどう生きるのか』を昨日観てきたので感想書いていきます!
公式サイトすらないような作品なので何書いても多少はネタバレ要素を含んでしまうと思います。
あらすじとかざっくりした内容程度のことは書くので許してください。(記事後半からは、ガッツリ目にネタバレ含みます)
まず言いたいのは、この映画の一番すごいところは事前の宣伝などが一切されなかったことで「ほとんど何の情報もない映画をいきなり観ることが出来る」という点です。
現代では、ほとんど不可能な体験だと思います。
なので、こういう感想とか見ないですぐ観に行くことをおすすめします。
もう観たよって人か、そんなことはどうでもいいからどんな作品か知りたいって人はこの先読んでください。
まずあらすじは、
戦時中の日本で、主人公の少年・眞人(まひと)の母が勤める病院が火災にあい、亡くなってしまう。
眞人には自分に助けを求める母の声の幻聴が聞こえ、これ以来悪夢にうなされるようになっていたが、数年が経ち父は再婚し田舎へと引っ越すことになる。
父の再婚相手の夏子は亡くなった母の妹で、広大な敷地を持つ大豪邸のお嬢様、屋敷には何人ものお爺お婆が奉公していた。
父も戦時中の需要で潤う工場長として裕福な暮らしをしており、父も新しい母となる夏子も眞人に精一杯の愛情を注いでいたが、眞人は亡くなった母のことが気になるのかどこか馴染めずにいた。
そんな中、「眞人、助けて」と母の幻聴と同じ言葉を叫ぶ不気味なアオサギが現れる。
眞人はこの不気味で不愉快なアオサギを狩るべく木刀を持ち出しますが、アオサギは木刀を軽々と嚙み砕くパワーを見せて討伐に失敗し、アオサギの口の中から人間のような別の顔が現れて「お前の母はまだ生きていて、お前を待っている」と意味深な言葉を残します。
ちなみにこのアオサギがあのポスターの鳥男なのですが、実際にはあんなキリっとした顔つきではなく小汚いおじさんでした。
さらにアオサギへの敵意を燃やした眞人はお爺やお婆を煙草で買収してナイフを手に入れ、竹を切り出してお手製の弓矢を作りました。おそらくこの時眞人は10代前半くらいのまだ幼いと言える少年なのですが、凄まじい行動力です。
そんな中、悪阻で寝込んでいたはずの夏子が突如姿を消してしまいます。
屋敷の奉公人総出で探しても見つかりませんでしたが、眞人は森の中へ入っていく夏子を見かけていました。
この屋敷の敷地には、眞人の母や夏子の大叔父が建てたという不思議な塔があり、その地下には広大な謎の空間が広がっているとされていて、安全のためずっと前に入り口を埋められていたはずでした。
夏子を探すうちにこの塔にたどり着いた眞人と煙草大好きお婆・霧子はアオサギに誘われてこの塔の下に広がる異世界へと旅立っていきます。
果たして眞人は夏子を連れ戻して本当の家族となれるのか、そしてまだ母が生きているとはどういうことなのか?
眞人たちの冒険が今、始まる…!
って感じだったと思います。我ながらそこそこ上手くまとめられてるんじゃないかと思います。
ただ、ここまでは比較的分かりやすい話でネットでよくわけ分からんって言われてるのはここから先の話ですね。
でも正直、私も説明不足とは思いましたがわけ分からんとまでは思わなかったんですよね。
その理由を考えてみたっていうのが今回の本題になります。
この先の展開について簡単に言うと、「要素が多すぎてとっ散らかってる」って感じでした。
映画の尺は2時間くらいしかないのに、風呂敷がでかすぎて収まらないから「一つ一つの要素をちょっとずつ切り抜いて無理やりつなげた」みたいな印象です。
Twitterとかだと「これこそが宮崎駿だ」みたいな意見をよく見たんですが、そんなに宮崎駿について詳しくない私から見たら、この「一つ一つの要素」のそれぞれは、ハッキリ言って「物語でよくあるやつ」でした。繋げ方は狂ってますが一つ一つを見ればそんなに珍しいものではありません。
家族愛とか、異世界の創造とか、創造主に無理やり作られた種族の役割とか、タイムスリップとか、普段からラノベとか漫画とかアニメとかゲームでいろんな物語に触れているオタクだったら、「あー、これこういう話ね!」みたいになる部分が多かったんじゃないかと思います。
でも結局、本当のところどういう話だったのかの答え合わせは出来ないので、勝手に行間を妄想して勝手に自己満足できる人はまあ楽しめるけど、そうでない人(たぶん大多数はこっち)は「わけ分からん」って感想になったんじゃないでしょうか。
でも話はともかく、絵や劇伴はさすがのジブリクオリティだったので「わけ分からん」かったって人も雰囲気は楽しめたんじゃないでしょうか。
冒頭の大火災のシーンから、眞人が階段を駆け上るシーンでとんでもない力の入りようを感じましたし、全編に渡って頻出する炎のエフェクトも美しいものでした。
私も映画を観ながら「たぶんこれはこういうことだろ」って勝手に脳内補完しながら映像の雰囲気に流されていたので観た直後は「良かったなあ」って思いましたが、冷静に考えるとやっぱり描写不足で不完全燃焼の部分が多かったように思いますね。
特に個人的に気になったところで言えば、
※※※この先ちょっとネタバレ要素が大きくなるのでまだ観てない人はすみませんがブラウザバックしてください※※※
夏子を連れ戻すことが目的なのに
・夏子が元の世界へ帰りたがらなかった理由
・結局夏子が帰る気になった理由
が妄想で補完する材料すら見つけられなかったのは、さすがに物語として破綻しちゃってるんじゃないかと思いました。
そして一番気になったのは、
「眞人がどうやって亡き母への想いに整理をつけ、新しい家族となる夏子を受け入れていくのか」が主題だと思って観ていたのに、生前の母と眞人のやり取りは一切描写がなく、眞人が夏子を受け入れていく過程もほとんど描かれなかったことです。
生前の母については、「『君たちはどう生きるか』という本を成長した眞人のために遺してくれていた」というくらいしか描写がなかったと思います。
地下世界で母の若い頃の姿である「ヒミ」と出会いますが、そもそも生前の母を見たことが無いのでいまいち感慨が湧きづらかったです。
もうちょっと母子としてのやり取りを描いてくれていたら、ラストでヒミが眞人と同じ扉ではなく自分が元いた時代の扉を選んだことももっと感動出来たんじゃないかと思います。
私の見方が間違っていたということもあると思いますが、じゃあ他に何が主題だったんだって言うとそれも分かりませんでした。
タイトルの「君たちはどう生きるのか」は、クライマックスで眞人が異世界の神になることを捨てて元の世界に帰ることを選んだことを指していそうな気がしますが、アレに関しても唐突でしたよね。
ある程度は「そういうものなんだろ」と無理やり納得することも出来ますが、当初は「上の世界は嫌いだ」と言っていた眞人がどうしてそう選択するに至ったのかっていうのはもうちょっと丁寧に見せてくれても良かったんじゃないかと思います。
もっと言うと、眞人自身のキャラクター性が最初から子供とは思えないほど落ち着いて大人びている(悪く言えば狡猾)ので作中通しての成長みたいなものもあまり感じられませんでした。強いて言うならちょっと明るくなったくらいでしょうか。自身の中の悪意を認めたのは成長と言えるかもしれませんが、それもやはり結果だけで過程がありません。
私の読解力が足りていなかっただけという可能性もありますが、そんな高度な読解力が必要な作品ならそれはそれで大衆向け映画としてはイマイチと言わざるを得ないでしょう。
総じて、いろいろやりたいことを詰め込んだ結果、全てが中途半端になって何が言いたいのか分からなくなってしまった作品という印象でした。
小学生の頃、雑誌の付録でプレイステーションのいろんな作品の体験版が1つにまとめられたDiscがついてきて、ひたすらそれを遊び倒していたんですが、そんな感じの映画です。でもこの映画は体験版だけで終わりで本製品はありません。
ただ、体験版だけでも面白いゲームは面白いように、この映画も面白い要素はたくさんあります。
私も気になるところもありはしましたが、楽しめました。
妄想で補完するところが多い分、観た人によって印象は大きく変わると思うので、興味あるけどまだ観ていないという方はあまりネットの意見を鵜呑みにせずに自分で観に行ったらいいと思います。
もう観たという方は、妄想でも考察でもいいので、上に挙げた私の気になる点について「こうだよ」ってのがあればぜひコメントお願します!もちろん普通の感想も大歓迎です。
以上!
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